牛ふん・豚ふん・鶏ふんは、同じ家畜ふん堆肥でも肥料成分や適した使い方が違います。
大まかには、牛ふんは土づくり寄り、豚ふんは中間的、鶏ふんは肥料としての性格が強い傾向があります。
この記事では、3種類の肥料成分・施用量を比較し、目的に合った選び方を実際の使用経験も交えて解説します。
牛ふん・豚ふん・鶏ふんの違いを一覧で比較
まずは、3種類の違いを簡単に比較します。
| 比較項目 | 牛ふん堆肥 | 豚ふん堆肥 | 鶏ふん堆肥 |
|---|---|---|---|
| 肥料成分 | 比較的少ない | 牛ふんより多い傾向 | 比較的多い |
| 主な性格 | 土づくり寄り | 中間的 | 肥料寄り |
| 有機物の補給 | できる | できる | できる |
| 施用量 | 比較的多い | 牛ふんより少ない | 比較的少ない |
| 向いている使い方 | 土づくりを重視 | 土づくり+養分補給 | 肥料効果も重視 |
| 注意点 | 肥料分はゼロではない | 肥料分を考慮する | 過剰施用に注意する |
大まかなイメージは、
土づくり寄り ← 牛ふん ― 豚ふん ― 鶏ふん → 肥料寄り
ただし、これはあくまで一般的な傾向です。
同じ牛ふん・豚ふん・鶏ふんでも製品によって成分は異なるため、実際に使うときは成分表示を確認しましょう。
牛ふん・豚ふん・鶏ふんの肥料成分と施用量を比較
3種類の違いは、実際の数字で見るとさらに分かりやすくなります。
ここでは、
- 窒素・リン酸・カリの含有量
- 10a当たりの施用量
- 同じ種類でも生じる成分の違い
の3点を見ていきます。
窒素・リン酸・カリを比較
農林水産省の資料に掲載されている家畜ふん堆肥の平均値は、次のとおりです。
| 種類 | 窒素(N) | リン酸(P₂O₅) | カリ(K₂O) |
|---|---|---|---|
| 牛ふん堆肥 | 2.2% | 2.8% | 2.7% |
| 豚ふん堆肥 | 3.2% | 6.7% | 2.9% |
| 鶏ふん堆肥 | 3.2% | 7.8% | 4.1% |
※乾物当たりの平均値です。
出典:農林水産省資料
このデータで特に目立つのが、リン酸の違いです。
- 牛ふん堆肥:2.8%
- 豚ふん堆肥:6.7%
- 鶏ふん堆肥:7.8%
豚ふん・鶏ふんは、牛ふんよりリン酸を多く含む傾向があります。
そのため、家畜ふん堆肥を「土づくりのため」に使っていても、種類によっては多くの肥料成分を同時に畑へ入れることになります。
なお、堆肥に含まれる成分のすべてが、施用した年に作物へ利用されるわけではありません。
「含まれている量」と「実際に肥料として効く量」は分けて考える必要があります。
施用量は牛ふん・豚ふん・鶏ふんで大きく違う
肥料成分が違うため、施用量の目安にも差があります。
大阪府が示している一般的な施用量を比較すると、次のようになります。
| 種類 | 10a当たり施用量の目安 | 1㎡当たりに単純換算 |
|---|---|---|
| 牛ふん堆肥 | 1~2t | 1~2kg |
| 豚ふん堆肥 | 約0.5t | 約0.5kg |
| 鶏ふん堆肥 | 約0.2~0.3t | 約0.2~0.3kg |
※1㎡当たりは、10a=1,000㎡として単純換算しています。
出典:大阪府「家畜ふん堆肥の利用について」
この表から分かるように、牛ふん堆肥と鶏ふん堆肥では、同じ面積でも施用量の目安が大きく違います。
ただし、これはあくまで一般的な目安です。
実際の施用量は、
- 育てる作物
- 土壌の状態
- 使用する堆肥の成分
などによって変わります。
同じ種類でも肥料成分には幅がある
ここまで紹介した数値は、牛ふん・豚ふん・鶏ふんの特徴を比較するための目安です。
同じ牛ふん堆肥でも、
- 原料
- 副資材
- 水分
- 製造方法
などによって成分は変わります。
そのため、平均値だけを見て施用量を決めるのではなく、実際に購入した堆肥の成分表示を確認することが大切です。
目的別|牛ふん・豚ふん・鶏ふんの選び方
牛ふん・豚ふん・鶏ふんは、「どれが一番良いか」ではなく、何を目的に使うのかで考えると選びやすくなります。
土づくりを重視するなら牛ふん堆肥
牛ふん堆肥は、有機物を補って土づくりをしたい場合に使いやすい堆肥です。
主な特徴は、
- 豚ふん・鶏ふんより肥料成分が少ない傾向がある
- 比較的多い量を施用して土づくりに利用される
- 有機物を補給できる
という点です。
ただし、牛ふんにも窒素・リン酸・カリは含まれています。
土づくり用だからといって、肥料成分を無視してよいわけではありません。
土づくりと養分補給を考えるなら豚ふん堆肥
豚ふん堆肥は、有機物を補いながら肥料成分も利用したい場合の選択肢になります。
特徴としては、
- 牛ふんより肥料成分が多い傾向がある
- 特にリン酸が多い傾向がある
- 土づくりと養分補給の両方を考えて使える
ことが挙げられます。
別に肥料を施す場合は、豚ふん堆肥から供給される養分も含めて施肥量を考えます。
肥料効果を重視するなら鶏ふん堆肥
鶏ふん堆肥は、3種類の中では肥料としての性格が強い堆肥です。
- 肥料成分が比較的多い
- リン酸やカリが多い傾向がある
- 牛ふんより少ない施用量で使われる
といった特徴があります。
そのため、牛ふんと同じ感覚で大量に入れるものではありません。
ほかの肥料と併用するときも、鶏ふんから供給される養分を考慮します。
養分が多い土では「何を入れないか」も考える
堆肥を選ぶときは、不足しているものを補うだけでなく、すでに十分ある養分をこれ以上増やさないことも重要です。
例えば、土壌分析でリン酸が十分にある畑へ、リン酸を多く含む堆肥を繰り返し施用すれば、土づくりが目的でも余分な養分を持ち込むことになります。
そのため私は
「何を入れるか」だけでなく、「何をこれ以上入れたくないか」
も考えて資材を選ぶようにしています。
実際の畑で牛ふん堆肥を選んだ理由
私の畑でも、土づくりに牛ふん堆肥を使っています。
ただし、「牛ふんが一番優れているから」という理由で選んだわけではありません。
目的は、肥料を効かせることではなく、有機物を補って土づくりをすることでした。
本来は腐葉土を多く入れたかった
当初考えていたのは、
- できれば腐葉土を多く入れたい
- 有機物を補いたい
- 肥料成分は必要以上に増やしたくない
という方法でした。
しかし、実際の畑で使うとなると、かなりの量が必要になります。
必要な量の腐葉土を確保できなかったため、現実的に入手しやすい牛ふん堆肥を使うことにしました。
肥料分を増やしたくなかったので牛ふんの量も抑えた
牛ふん堆肥を選んでも、肥料成分がゼロになるわけではありません。
私の畑では、
- 土づくりはしたい
- 有機物は補いたい
- 肥料成分は必要以上に増やしたくない
という条件がありました。
そのため、牛ふん堆肥の投入量自体も抑えています。
「牛ふん=土づくり用だから多く入れる」とは考えず、現在の土の状態を優先しました。
牛ふんを減らした分は腐植を補う資材を併用した
牛ふん堆肥を減らした分の土づくりを補うため、腐植を補うタイプのペレット状土壌改良材も併用しました。
私の場合、資材を選ぶときは、
土をどうしたいか
↓
今の土に何が必要か
↓
何を余計に増やしたくないか
という順番で考えています。
家畜ふん堆肥も、種類だけで決めるのではなく、畑の状態と目的に合わせて選ぶことが大切です。
家畜ふん堆肥を選ぶ・使うときの注意点
家畜ふん堆肥を使うときは、牛・豚・鶏という種類だけで判断しないようにします。
特に確認したいのは、
- 成分表示
- 腐熟の状態
- 施用量
- ほかの肥料との組み合わせ
です。
成分表示を確認する
まず確認したいのが、窒素・リン酸・カリなどの成分表示です。
特に見ておきたいのは、
- 窒素(N)
- リン酸(P₂O₅)
- カリ(K₂O)
- 水分
- C/N比(表示されている場合)
です。
同じ牛ふんでも、製品によって成分は違います。
「牛ふんだから」「鶏ふんだから」だけで判断せず、実際に何がどのくらい含まれているのかを見ることが大切です。
十分に腐熟したものを選ぶ
以前、畜産農家から牛ふんを購入したことがあります。
そのときはまだ生に近い状態で、家畜ふん特有のにおいも強く残っていました。
昔から「生に近い牛ふんはすぐ畑に入れない方がいい」と聞いていたため、そのまま使用せず、しばらく置いておきました。
途中で何度かひっくり返して切り返しもしましたが、量があるとかなり大変な作業でした。
当時は理由まで詳しく理解していたわけではありません。
その後調べてみると、農林水産省も、未熟な堆肥など品質の劣るものは、作物の生育障害などにつながる可能性があるとしています。
そのため、特に畜産農家などから直接購入する場合は、すぐ畑に使える程度まで腐熟しているかを確認しておくと安心です。
入れすぎによる養分の蓄積に注意する
家畜ふん堆肥を施用すると、有機物だけでなく肥料成分も土へ入ります。
特に豚ふん・鶏ふんはリン酸などを多く含む傾向があるため、「堆肥だから」という理由だけで繰り返し多量に施用するのは避けます。
可能であれば土壌分析も利用し、
- どの養分が不足しているのか
- どの養分が十分にあるのか
- これ以上増やしたくない養分は何か
まで確認すると、堆肥を選びやすくなります。
ほかの肥料と併用するときは堆肥の肥料分も考える
家畜ふん堆肥を施用したうえで、いつもと同じ量の肥料を追加すると、必要以上に養分を入れてしまうことがあります。
考えるべきなのは、
堆肥から入る養分 + 肥料から入る養分
です。
堆肥と肥料を完全に別物として考えず、両方から供給される養分を合わせて考えることが大切です。
牛ふん・豚ふん・鶏ふんについてよくある疑問
家庭菜園ではどれが使いやすい?
土づくりを主な目的にするなら、肥料成分が比較的少ない牛ふん堆肥は使いやすい選択肢です。
ただし、必ず牛ふんが最適とは限りません。
育てる野菜や土の状態、ほかに使用する肥料によって選びましょう。
鶏ふんは堆肥?それとも肥料?
発酵させた鶏ふんは家畜ふん堆肥ですが、牛ふん堆肥と比べて肥料成分が多く、肥料としての性格が強い資材です。
「堆肥だから肥料ではない」と考えず、成分を確認して使用します。
牛ふんと鶏ふんを一緒に使ってもいい?
組み合わせること自体より、最終的にどれだけの肥料成分を畑へ入れることになるかを考えることが重要です。
併用する場合は、
- 牛ふんから入る養分
- 鶏ふんから入る養分
- そのほかの肥料から入る養分
を合わせて考えます。
家畜ふん堆肥は毎年入れてもいい?
毎年必ず同じ量を入れる必要はありません。
堆肥を施用するたびに、有機物だけでなく肥料成分も土へ入ります。
そのため、土壌によっては養分が蓄積していくことがあります。
「毎年入れる」と決めるのではなく、土の状態・育てる作物・使用する堆肥の成分を見て判断するのがよいでしょう。
まとめ|牛ふん・豚ふん・鶏ふんは目的と成分を見て選ぶ
牛ふん・豚ふん・鶏ふんは、同じ家畜ふん堆肥でも肥料成分・施用量・向いている使い方が違います。
大まかには、
- 牛ふん:土づくり寄り
- 豚ふん:土づくりと肥料の中間的
- 鶏ふん:肥料寄り
と考えると分かりやすいでしょう。
ただし、同じ種類でも製品によって成分には差があります。
大切なのは、「牛・豚・鶏のどれが一番良いか」ではありません。
現在の土に何が必要なのか。そして、何をこれ以上増やしたくないのか。
土の状態と目的を見て、使う堆肥と量を決めることが大切です。
肥料と堆肥そのものの役割の違いについては、関連記事「肥料と堆肥の違いとは?役割・効果・使い分けを農家がわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
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