ほうれん草の土づくりと肥料の使い方|元肥・追肥の量と土質別のポイントを農家が解説

ほうれん草の作りと肥料の使い方

ほうれん草の種をまく前に、どんな土づくりをしていますか?

「苦土石灰は入れた方がいいの?」「肥料はどれくらい必要?」「堆肥も入れないといけない?」

いざ育てようとすると、意外と迷うことが多いですよね。

実は、ほうれん草は土の状態によって育ち方に差が出やすい野菜です。

私は長年、ハウスでほうれん草を栽培してきました。肥料が足りずに困ることもありますが、反対に、肥料を入れすぎて土の状態が悪くなることも経験しています。

そこでこの記事では、家庭菜園でも実践しやすい土づくりと肥料の使い方を紹介します。

難しい専門知識は必要ありません。

まずは自分の畑の土を知り、必要なものを必要なだけ入れる。

これが、私の考える土づくりの基本です。

目次

ほうれん草に適した土とは?まずは3つのポイントを確認

ほうれん草が育ちやすい土には、主に3つの条件があります。

  • 水はけがよく、根が伸びやすい
  • 適度に水分と肥料を保てる
  • 酸性が強すぎない

特に注意したいのが、水はけと土の酸性度(pH)です。

ほうれん草は酸性の強い土が苦手で、水がたまりやすい場所でも根の生育が悪くなりやすい特徴があります。

土づくりの早見表

項目目安・ポイント
土壌pH6.5前後を目標にする
水はけ雨のあと長く水がたまらない
土の硬さ根が伸びやすいよう十分に耕す
堆肥土の状態に応じて使用
石灰pHが低い場合に使用
元肥種まき前に土へ混ぜる
追肥生育や栽培期間に応じて判断

※数値や施用量は土壌条件によって変わります。

pHは6.5前後を一つの目安に

pHとは、土が酸性かアルカリ性かを示す数字です。

数字が小さいほど酸性が強くなり、7が中性になります。

ほうれん草は酸性の土を苦手とするため、pH6.5前後を一つの目標にするとよいでしょう。

ただし、ここで気をつけたいことがあります。

ほうれん草を育てるからといって、毎回必ず石灰を入れる必要はありません。

すでにpHが適正なら、石灰を追加しなくても問題ありません。

石灰の入れすぎも土のバランスを崩す原因になるため、できれば種まき前にpHを測っておきましょう。

ほうれん草の土づくりは3ステップ

初めて栽培する人は、次の順番で準備すると分かりやすいと思います。

① 種まき2週間ほど前|土を耕して、水はけとpHを確認

まず、栽培する場所の土を十分に耕します。

ほうれん草は下に根を伸ばすため、表面だけでなく、深さ20cm程度まで耕せるとよいでしょう。

このとき、土の状態も確認してみてください。

  • 雨のあと、水が長くたまっていないか
  • 土が硬く締まっていないか
  • pHが低すぎないか

水はけが悪い畑では、周囲より畝を高くするのも有効です。

また、pHが低い場合は、苦土石灰などの石灰資材で調整します。

石灰を入れる量は、現在のpHや土質によって異なります。製品の表示を参考にし、できれば土壌診断に基づいて調整しましょう。

石灰を撒いた畑

② 土の状態に応じて堆肥を入れる

堆肥は、土づくりに役立つ資材です。

土をほぐれやすくしたり、土の中の水分や空気のバランスを整えたりする効果が期待できます。

ただし、堆肥は肥料とは少し役割が違います。

堆肥は土づくり、肥料は主に作物への養分補給。

このように考えると分かりやすいでしょう。

もちろん、堆肥にも肥料成分は含まれています。

私も牛ふん堆肥を使用していますが、堆肥だからといって無制限に入れてよいわけではありません。

特に、長年栽培している畑では、すでに養分が十分残っている場合があります。

堆肥を使う場合は、十分に腐熟したものを選び、土の状態に合わせて量を調整してください。

③ 種まき1週間ほど前|元肥を入れて土によく混ぜる

元肥(もとごえ)とは、種まきや植え付けの前に入れる肥料のことです。

ほうれん草は栽培期間が比較的短いため、元肥を中心に育てるのが基本になります。

肥料を畑全体に均一にまき、土によく混ぜ込みましょう。

肥料が一か所に固まると、根の近くで肥料濃度が高くなり、発芽や根の生育に影響することがあります。

土としっかり混ぜてから、種まきの準備を進めます。

※土づくりの順番は一般的な目安です。堆肥や石灰などの資材は種類によって使い方が異なるため、製品の説明も確認してください。

土質によって土づくりはどう変わる?

ここは少しだけ、土の違いについてお話しします。

畑の土は、どこも同じではありません。

水がすぐに抜ける畑もあれば、雨が降るとなかなか乾かない畑もあります。

そのため、同じ肥料を同じ量だけ入れても、必ず同じように育つとは限りません。

まずは、自分の畑がどのような土なのかを知ることが大切です。

砂っぽい土|水も肥料も流れやすい

砂が多い土は、水はけがよい反面、水分や肥料を保ちにくい特徴があります。

水やりをするとすぐに乾いたり、雨が続くと肥料の成分が流れたりすることがあります。

このような畑では、完熟堆肥などを利用して、土が水分を保てるようにすることが大切です。

また、肥料を一度に大量に入れるのではなく、必要に応じて補うことも考えましょう。

ただし、肥料を少しずつ与えれば必ずよいというわけではありません。元肥の量と追肥の必要性を、作物の生育に合わせて判断してください。

粘り気のある土|まずは水はけを改善

雨のあとに土がベタベタしたり、乾くと硬くなる畑は、粘土分が多い可能性があります。

このような土は、水分や養分を保ちやすい一方、水はけが悪くなることがあります。

ほうれん草は根の状態が生育に影響するため、水がたまる畑では注意が必要です。

私なら、肥料を増やす前に水はけを確認します。

  • 畝を高くする
  • 畑の周囲に排水のための溝を作る
  • 土が湿りすぎているときに無理に耕さない

水はけが悪いまま肥料だけを増やしても、うまく育つとは限りません。

黒くてふかふかした土|肥料が足りないとは限らない

黒ボク土は、火山灰の影響を受けてできた土で、黒く、比較的ふかふかしたものが多いのが特徴です。

私が栽培している畑にも黒ボク土があります。

黒ボク土には、リン酸が土に固定され、作物が利用しにくくなる性質があります。

そのため、リン酸の状態に注意する必要があります。

ただし、黒ボク土だからリン酸肥料をたくさん入れればよい、ということではありません。

長年肥料を使っている畑では、リン酸が十分に蓄積していることもあります。

土の見た目だけで肥料の必要量は判断できないので、栽培を繰り返している畑ほど、土壌分析が役立ちます。

土質別のポイントまとめ

土の特徴土づくりで優先したいこと
砂っぽい土水分と肥料を保つ工夫
粘り気のある土排水性と通気性の改善
黒ボク土pHやリン酸など養分の状態を確認
水はけと保水のバランスがよい土基本的な土づくりと適量の施肥

大切なのは、土質によって肥料の量を決めつけないことです。

土の種類は、土づくりを考えるためのヒント。実際の施肥量は、それまでの栽培や肥料の使用状況も考えて決めましょう。

ほうれん草の元肥は何をどれくらい入れる?

家庭菜園で扱いやすいのは、8-8-8などの一般的な化成肥料です。

8-8-8とは、窒素・リン酸・カリという肥料の三要素が、それぞれ8%含まれていることを示しています。

難しく考える必要はありません。

ほうれん草だけでなく、さまざまな野菜にも使える肥料です。

元肥の量は1㎡あたりどれくらい?

一般的な家庭菜園の栽培資料では、元肥として化成肥料を1㎡あたり100〜150g程度使用する例があります。

ただし、これはすべての畑や肥料に共通する量ではありません。

栽培する広さ化成肥料の施用例
1㎡100〜150g
2㎡200〜300g
3㎡300〜450g
5㎡500〜750g

※JAえひめ中央の家庭菜園向け栽培例に基づく、一般的な化成肥料の目安です。8-8-8を含むすべての製品に、そのまま当てはまる推奨量ではありません。

実際には、使用する肥料の成分と、土に残っている養分を考えて調整します。

特に次のような畑では、肥料の入れすぎに注意してください。

  • 前作でたくさん肥料を入れた
  • 堆肥を毎年多く使用している
  • 同じ畑で何度も栽培している

反対に、初めて野菜を育てる畑では、土づくりから考える必要があります。

プランターの場合は?

市販の野菜用培養土には、最初から肥料が入っているものがあります。

その場合、さらに元肥を追加する必要がないこともあります。

まずは培養土の袋に書かれている説明を確認しましょう。

「元肥入り」と書かれている培養土なら、初めから追加の肥料を入れすぎないようにしてください。

ほうれん草に追肥は必要?いつ与える?

追肥(ついひ)とは、野菜が育っている途中に追加する肥料のことです。

ほうれん草は元肥を中心に育てられるため、必ずしも追肥が必要というわけではありません。

ただし、栽培期間や土の状態によっては追肥が役立ちます。

追肥を考えたいケース

例えば、次のような場合です。

  • 寒い時期で栽培期間が長くなっている
  • 元肥が少なかった
  • 砂っぽい土で肥料が流れやすい
  • プランターで肥料が不足している可能性がある

追肥する時期の例としては、種まきから1か月前後が挙げられます。

特にプランター栽培の場合、肥料分が流亡しやすいです。

ただし、収穫までの期間が短い場合や、元肥が十分な場合は、追肥をしなくても育ちます。

追肥するときの注意点

固形肥料を使う場合は、葉や根元に肥料が集中しないよう、株から少し離れたところに適量を施します。

液体肥料を使う場合は、製品の表示に従って水で薄めます。

ここで覚えておきたいのは、生育が悪いからといって、必ず肥料不足とは限らないということです。

ほうれん草は、暑さや日照不足、排水不良などでも生育が悪くなります。

原因を確認しないまま追肥すると、かえって状態を悪くする場合があります。

ほうれん草におすすめの肥料3選

ここまで土づくりと施肥の基本を説明してきました。

では、実際にどんな肥料を選べばよいのでしょうか。

家庭菜園では、特別なほうれん草専用肥料を用意しなくても育てられます。

ここでは、使いやすさや用途を考えて3種類紹介します。

① 化成肥料8-8-8|初めての栽培にも使いやすい

元肥として使いやすいのが、8-8-8の化成肥料です。

窒素・リン酸・カリがバランスよく含まれているため、ほうれん草以外の野菜にも使えます。

こんな人におすすめ

  • 初めてほうれん草を育てる
  • ほかの野菜にも使いたい
  • 手頃で管理しやすい肥料がほしい

肥料の種類に迷ったら、まず候補にしたい製品です。

ただし、必要以上に入れないよう、使用量は確認しましょう。

② 東商「有機100%野菜の肥料」|有機質肥料を使いたい人に

有機質の肥料を使いたい人には、東商の「有機100%野菜の肥料」という選択肢があります。

有機質肥料は、土の中で微生物に分解されながら養分が供給されるものが多く、効き方は土の温度や水分などに左右されます。

こんな人におすすめ

  • 有機質肥料を使いたい
  • 野菜全般に利用できる肥料を探している
  • 土づくりと合わせて肥料を考えたい

ただし、有機質肥料だから入れすぎても安全というわけではありません。

製品ごとの使用量を守って施用しましょう。

③ ハイポネックス原液|液体肥料で追肥したい人に

ハイポネックス原液は、水で薄めて使用する液体肥料です。

主に、生育途中で肥料を補いたい場合の選択肢になります。

こんな人におすすめ

  • プランターで育てている
  • 液体肥料を使ってみたい
  • ほかの野菜や花にも利用したい

メーカーが案内する野菜向けの一般的な希釈倍率は500倍です。

例えば、水1Lに対して原液2mLが500倍希釈になります。

ただし、幼苗などでは異なる希釈倍率が案内されているため、使用時は必ず製品ラベルを確認してください。

また、元肥が十分に効いている場合は、無理に液肥を追加する必要はありません。

肥料は3種類すべて買わなくても大丈夫

ここまで3種類紹介しましたが、すべてを購入する必要はありません。

私なら、初めて畑でほうれん草を育てる人には、まず一般的な野菜用肥料を一つ用意することをおすすめします。

そのうえで、生育途中に肥料が不足するようなら、追肥を考える。

それくらいシンプルな考え方で十分です。

肥料は多ければよいわけではない|農家が経験した土の問題

ここからは、私自身の経験を少し紹介します。

長年ハウス栽培を続けていると、土の中に肥料成分が蓄積することがあります。

私の圃場でも、土壌分析によって肥料成分の蓄積やECの高さが確認されたことがありました。

ECが高いってどういうこと?

ECとは、土に溶けている肥料成分などの塩類が、どれくらいあるかを知るための目安です。

難しく聞こえますが、ここでは次のように考えてください。

肥料が土の中にたまりすぎていないかを確認する、一つの数字です。

肥料成分が多すぎると、根が水を吸いにくくなることがあります。

水を十分に与えているのに、根からうまく水を吸収できない。

そんなことも起こり得ます。

もちろん、ECだけですべての土壌問題が分かるわけではありません。

それでも、肥料を追加するべきか判断する際には大切な情報になります。

私が施肥管理で考え直したこと

以前は、施肥設計に基づいて肥料を使用していました。

しかし、同じような施肥を続けても、畑によって肥料の残り方は違います。

特に、雨によって肥料が流れにくいハウスでは、養分が蓄積しやすいことがあります。

その経験から、私は肥料を入れる量だけでなく、今、土の中に何がどれくらい残っているのかを重視するようになりました。

家庭菜園では、毎回土壌分析をするのは難しいと思います。

それでも、前作でどれくらい肥料を入れたかを覚えておくだけで、次の土づくりに役立ちます。

「前回と同じ量を入れれば安心」とは限らないんですね。

現役農家のほうれん草栽培では、肥料をどう使っていた?

私がハウスでほうれん草を栽培していたときは、基本の肥料だけでなく、苦土・石灰・微量要素などを分けて使用していました。

さらに、同じ圃場で繰り返し栽培するときは、2作目以降の種まき前に肥料を追加することもありました。

当時使用していたものには、スピードチッソやファイン千代田があります。

ファイン千代田は水に溶かして使用する液肥用の製品ですが、私は以前、直接土壌に散布して使用していました。

これは当時の栽培経験であり、現在の製品で同じ方法をおすすめするものではありません。

また、ファイン千代田は窒素だけでなく、リン酸やカリも含む肥料です。

このように農業の現場では、土の状態や栽培回数に合わせて肥料を使い分けることがあります。

とはいえ、家庭菜園で同じ管理をする必要はありません。

まずは一般的な野菜用肥料から始め、栽培しながら自分の畑に合った方法を見つけていくのがよいと思います。

ほうれん草の土づくりと肥料でよくある質問

Q. 苦土石灰は必ず入れないといけませんか?

必ずしも必要ではありません。

土壌pHが低い場合には役立ちますが、すでに適正なpHなら追加しなくてもよいことがあります。

できればpHを測ってから判断しましょう。

Q. 堆肥と化成肥料は両方必要ですか?

必ず両方必要というわけではありません。

堆肥は土づくりに役立ち、化成肥料は作物に必要な養分を補う役割があります。

ただし、堆肥にも養分が含まれているため、土の状態によっては化成肥料を減らせる場合があります。

Q. 肥料を入れずにほうれん草は育ちますか?

土の中に十分な養分が残っていれば、肥料を追加しなくても育つことがあります。

ただし、初めて使用する畑や養分の少ない土では、肥料が必要になる場合があります。

Q. 葉が黄色くなったら追肥した方がいいですか?

肥料不足の可能性もありますが、それだけではありません。

低温や過湿、根の傷み、病害虫などでも葉が黄色くなることがあります。

まずは土の湿り具合や株の状態を確認してみましょう。

Q. 土づくりをしないで種をまくとどうなりますか?

土の状態がよければ育つこともあります。

しかし、土が硬い、水はけが悪い、酸性が強いといった場合には、発芽後の生育に影響する可能性があります。

特に初めて使う畑では、土の状態を確認してから種をまくことをおすすめします。

まとめ|ほうれん草の土づくりは、まず自分の畑を知ることから

ほうれん草を上手に育てるためには、肥料の種類や量だけでなく、土の状態を考えることが大切です。

最後に、今回のポイントをまとめます。

  • 水はけと根の伸びやすさを確認する
  • pHは6.5前後を一つの目安にする
  • 堆肥や石灰は必要に応じて使う
  • 元肥を中心に考え、追肥は生育に合わせて判断する
  • 土質によって、水や肥料の残り方が違うことを知っておく
  • 肥料の入れすぎにも注意する

家庭菜園では、最初から完璧な土づくりを目指さなくても大丈夫です。

まず育ててみる。そして、生育の様子を見ながら少しずつ土を改善していく。

私自身、長年農業を続けていますが、土づくりには今でも学ぶことがたくさんあります。

大切なのは、肥料をたくさん入れることではなく、その畑に必要なものを見極めること。

ぜひ、自分の畑の土を観察するところから始めてみてください。

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この記事を書いた人

代々続く農家に生まれ、気づけば農業歴22年。水菜・ほうれん草・しいたけなどを栽培してきました。

野菜づくりで一番好きなのは、発芽と収穫の瞬間。野菜を食べるのも料理するのも大好きで、調理師免許も持っています。

気になったことは自分で試してみたい性格。農家としての経験と実際の比較実験をもとに、家庭菜園の楽しさを発信しています。

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